独自の乾漆技法を追求
繊細な乾漆素地が輪島塗の形を自由にする
「池昭」が手掛ける輪島塗はベースに木地を使わない、乾漆製法によるもの。
輪島塗としてスタンダードなのは、素地に木地を使ったのものです。木地を磨き、生漆と米糊に地の粉を混ぜたものを塗り重ね、中塗り、上塗りを経て加飾が施されます。
これに対して「池昭」が手掛ける輪島塗はベースに木地を使わない、乾漆製法によるもの。これは古来、仏像などに用いられた伝統の製法で、石膏や粘土などで型を造り、その中に麻布と漆を何層にも塗布し、それを型からはずすことで素地を造ります。「池昭」の乾漆は、その技法を発展させたオリジナルの製法。凸凹型など多彩な型を使い分け、麻布のほかに和紙も使用し、多彩な形を造ります。素地が完成した後の工程は、木地を使った輪島塗と同様で、磨き、塗りを何度も重ねることで堅牢さと美しさを培います。
乾漆の特長は、木地では成形しづらい形状をくるいなく造ることができ、時が経っても木地がやせて縮むことがないこと。造りたい形から型と技法を発想し、あるいは型から完成形をイメージして、極薄で繊細な曲線を描く素地を造りあげています。
また、乾漆の製造工程で最も難しいのが型の剥離。その方法は漆芸家ごとに異なり、「池昭」でもその方法を知っているのは主人のみです。
池昭の乾漆技法
1.原型を発想する
「池昭」の特長である素地が薄く、自由な造形の輪島塗は、独創的な型づくりによって生み出されています。伝統の乾漆技法で使われる石膏や粘土のほかに、身のまわりにある丸いもの、四角いもの、凸凹したものを原型としています。
2.麻布と漆で素地を造る
漆をしみこませた麻布を原型に幾重にも塗布し、最後に型を剥離することで素地を造ります。アイテムによって麻布を使い分け、大きな形をした品ほど布の目が粗くなります。また、布の枚数や漆を塗り重ねる回数によって、素地の薄さが決まります。
3.塗と磨きを繰り返す
素地が完成した後は、木地で作る輪島塗と同様に、塗と磨きを繰り返します。漆に米糊と地の粉を混ぜたものを塗り、サンドペーパーで丁寧に磨き、また塗を重ねることで堅牢さと美しさを培います。上塗りは専門の上塗り職人が行います。
4.加飾をほどこす
輪島塗の加飾技法には沈金と蒔絵があります。写真は蒔絵技法の一種で、赤、黄、緑など幾重にも塗り重ねた色漆を研磨剤で研ぎだしている様子です。沈金、蒔絵は専門の職人が行います。